大阪IR構想に医療ツーリズムを提案 米運営大手シーザーズ、関西の先端技術と連携

カジノを含む統合型リゾート施設(IR)を米ラスベガスなどで運営する大手事業者、シーザーズ・エンターテインメントとウィン・リゾーツの両最高経営責任者(CEO)が20日、産経新聞の単独インタビューに応じた。シーザーズのマーク・フリッソーラCEOは、大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)(大阪市此花区)でのIR開発構想に参画できれば、関西の医療施設と連携した医療ツーリズムを展開する考えを明らかにした。

すでに医療機関と協議

医療ツーリズムは近年、アジアの富裕層を中心に利用が拡大しており、フリッソーラ氏は「知名度が高い関西で、レベルの高い医療関連技術を生かせば、中国などから多くの集客が期待できる」と述べた。シーザーズは再生医療など先端医療研究が盛んな関西の力を生かす方針で、すでに複数の医療施設と協議し、提携先候補のリストも作成しているという。またフリッソーラ氏は、「検診後にIR施設でおいしい食事や、魅力あるショー、スパ(入浴施設)などを楽しめる」と述べ、医療ツーリズムとIRの連携効果を強調した。

五つ星のおもてなし

一方、ウィンのマット・マドックスCEOは、同社の強みについて、運営する複数のホテルが米フォーブス誌のホテル格付けで五つ星を獲得しているとアピール。「日本でもすばらしいおもてなしができる」と訴えた。また、IR施設の雇用拡大効果を「2万~4万人程度」と見積もった。

医療ツーリズム普及に追い風

大阪・夢洲でのIR開発構想に医療ツーリズムを加える提案は、IRの集客力を高めるとともに、日本での医療ツーリズム普及に寄与し、大きな経済効果に結びつく可能性を秘めている。タイやマレーシア、韓国は外貨獲得などを目的に医療ツーリズムを推進し、規制緩和や税控除など積極的な支援策を展開している。一方、日本では外国語での診療や、医療訴訟リスクが課題となり、普及は進んでいない。公的な医療保険制度が整備された日本で、医療ツーリズムは医療の商業化を招いて公平性を阻害すると懸念する声もある。

ただ、需要が存在することは間違いない。最先端の医療技術研究が集積する大阪では、中国人によるがんの検診や治療件数が増えているという。南海電気鉄道は、南海難波駅の隣接地に建設中の複合ビルに、がん診断の最先端機器を備えたクリニックを開設し、インバウンド(訪日外国人客)を誘致する計画だ。関西圏でこうした取り組みが広がり、外国人への医療の安心が確保されれば、日本での医療ツーリズム先進地になれるだろう。関西のインバウンド事情に詳しいアジア太平洋研究所の稲田義久・数量経済分析センター長は、「多言語対応できる医師の確保など課題は多い」と指摘。そのうえで、IR開発と医療ツーリズムが融合すれば「国際的な医師の育成が進むなど、日本での医療ツーリズムが推進される可能性がある」とみている。

◇医療ツーリズム 医療機関での検診や治療を主目的にした旅行。近年では「ウェルネス・ツーリズム」と呼ばれる美容目的の旅行も含まれる。世界各国で取り組みが進み、特にアジアでは急成長。日本は訪日外国人客の需要を見込む。政府は平成22年に閣議決定した新成長戦略で、「国際医療交流」として外国人受け入れ促進を盛り込んだ。

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